お金を封筒に分けると、使いすぎを防げるのか。「仕切り」と「目印」の研究

給料が入ると、気づけばいつの間にか減っている。貯金用と生活費を分けたいけれど、うまくいかない。そんな悩みを持つ人は少なくありません。お金を物理的に分けて「仕切り」をつくると、使いすぎを抑え、貯金が増えやすくなることを示した研究があります。
3行でわかる
- インドの農村部で働く低所得の働き手146人を14週間調べた研究では、貯金用のお金を1つの封筒にまとめるより、2つの封筒に分けた方が多く貯まった。
- 貯金用の封筒に子どもの写真を付けて目的を思い出せるようにすると、貯金がさらに増えた。
- 食べ物の廃棄を調べた値引きの研究では、「いくら使ったか」に目を向けたり、「心の予算」を超えて使ったと感じたりすると、値引きで食べ物を捨てやすくなる効果が消えた。
01「仕切り」が、使う前に立ち止まる機会をつくる
お金を分けておくと、使うたびに「この封筒を開けていいか」と考える機会が生まれます。この小さな手間が、使いすぎのブレーキになると考えられています。
人はお金に「生活費」「貯金」などのラベルを付けて、心の中で分けて管理しています。物理的にお金を分けると、このラベルがよりはっきりします。
さらに、お金を複数の封筒や口座に分けると、使うたびに仕切りを越える必要が出てきます。研究者は、この仕切りが小さな「手間」となり、使うかどうかを考える機会を増やすと説明しています。
ただし、お菓子などを使った実験では、仕切りの効果は、自分で食べすぎや使いすぎを抑えたいと思っているときに働きやすく、そう思っていないときには弱まっていました。
02研究でわかっていること
貯金用のお金は、1つの封筒より2つに分けた方が多く貯まり、目的を思い出させる目印があるとさらに増えました。
Soman & Cheema(2011)[1]
インドの農村部の建設現場で働き、週ごとに現金で賃金を受け取る146人の働き手を対象に、賃金のうち貯金に回す分を封筒に入れて渡し、14週間調べた。貯金用のお金を1つの封筒にまとめるより、2つの封筒に分けた方が貯金額が多かった。貯金用の封筒に子どもの写真を付けて目的を思い出せるようにすると、貯金がさらに増えた。
対象: インド農村部の低所得の働き手146人 / 限界: 現金を封筒で管理した研究で、銀行口座やアプリを使う場合にそのまま当てはまるとは限らない。
Cheema & Soman(2008)[2]
チョコレートや賭けのお金を、まとめて渡す場合と小分けにして渡す場合を比べた。小分けにすると、使う量や使うペースが減った。仕切りは、使うかどうかを考える機会を増やしていた。ただし、使う量を抑えたいと思っていない人では、この効果は弱かった。同じ仕切りに慣れると効果が弱まり、仕切りの形をときどき変えると効果が保たれやすかった。
対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 仕切りの形がいつも同じだと、慣れて効果が弱まることがあった。
Wangら(2026)[3]
4つの研究で、値引きされた商品を買うと「得をした」と感じて気が大きくなり、食べ物を捨てやすくなることを示した。ただし、「いくら得したか」ではなく「いくら使ったか」に注目したときや、自分の「心の予算」を超えて使ったと感じたときには、この効果は消えた。
対象: 大学の食堂でのフィールド実験を含む4つの研究 / 限界: 食べ物の廃棄を調べたもので、貯金そのものを測ってはいない。
03今日からできる小さな一歩
お金を「生活費」と「貯金」に分け、貯金用には目的がわかる目印を付けます。封筒でも、口座やアプリの機能でもかまいません。
貯金用を2つ以上に分ける
貯金用のお金を、「旅行」「もしものとき」など目的別に2つ以上に分けます。1つにまとめるより、手をつけにくくなります。
所要 10分
目的がひと目でわかる目印を付ける
封筒や口座の名前に、目的や大切な人の写真を付けます。研究では、子どもの写真を付けた封筒で貯金が増えていました。
所要 5分
仕切りの形をときどき見直す
同じ仕組みに慣れると、効果が弱まることがあります。半年に一度、分け方や目標を見直します。
所要 10分
04続けるためのコツ
お金を分けることは、自分を縛るためではなく、使う前に考える機会をつくるためです。無理のない分け方から始めましょう。
- 銀行の目的別口座や、家計アプリの「仕分け」機能も、封筒の代わりに使えます。
- 生活費も週ごとに分けておくと、月末にお金が足りなくなるのに早めに気づきやすくなると考えられます。
- 分けたお金に手をつけてしまっても、自分を責めずに、次の週からやり直します。
- 借金の返済で生活が苦しいときは、消費者ホットライン(188)から最寄りの消費生活センターに相談できます。
05よくある質問
お金を分けて管理することについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
お金を封筒に分けると、本当に貯まるの?
効果を示した研究があります。インドの低所得の働き手146人の研究では、貯金用のお金を2つの封筒に分けた方が、1つにまとめるより多く貯まりました。
なぜ分けると使いすぎを防げるの?
仕切りを越えるたびに、使っていいかを考える機会が生まれるためと考えられています。小分けにすると使う量が減った実験もあります。
目的を書いておくと効果はある?
研究では、貯金用の封筒に子どもの写真を付けて目的を思い出せるようにすると、貯金がさらに増えました。
封筒でなく銀行口座でもいい?
研究は封筒で行われましたが、目的別口座やアプリの仕分け機能など、お金を分けて目的をはっきりさせる方法は応用できると考えられます。
出典
- Soman, D., & Cheema, A. (2011). Earmarking and Partitioning: Increasing Saving by Low-Income Households. Journal of Marketing Research, 48(SPL), S14-S22. https://doi.org/10.1509/jmkr.48.spl.s14
- Cheema, A., & Soman, D. (2008). The Effect of Partitions on Controlling Consumption. Journal of Marketing Research, 45(6), 665-675. https://doi.org/10.1509/jmkr.45.6.665
- Wang, Y., Xu, W., & Sarigöllü, E. (2026). Do Promotions Make Consumers More Wasteful? The Effect of Price Promotion on Consumer Food Waste Behavior. Behavioral Sciences, 16(4), 495. https://doi.org/10.3390/bs16040495


