目標貯金額を「見える化」すると続きやすいのか。進捗表示の研究

「あと〇〇円」という数字だけを見るより、棒グラフが埋まっていく様子を見る方が、なぜかやる気が続く。進捗の見せ方によってがんばり方が変わることは、実験で示されている。ただし、ここで紹介する実験の多くはお金以外の課題で行われたものだ。
3行でわかる
- 握力の実験で、時間の経過を数字(ストップウォッチ)ではなく棒グラフで見せると、ゴール近くで力が落ちにくかった(お金の実験ではない)。
- 目標までの距離によって、「達成した分」と「残りの分」のどちらを見せる方が効果的かが変わることもわかっている。
- 進捗を確かめるよう促すと目標を達成しやすくなることが、138件の実験をまとめた分析で示されている。
01数字より「見た目の進み具合」がやる気を左右する
同じ進捗でも、数字で見せるより視覚的に見せる方が、ゴール近くでがんばりが続きやすい。
実験では、握力計を130秒間握り続けるという単純な課題を使い、参加者の半分には時間の経過を画面の棒グラフで、もう半分にはストップウォッチだけを見せた。どちらのグループも疲れで力は落ちていったが、棒グラフで進捗を見せられたグループは、ゴールが近づいたときの力の落ち方がゆるやかだった。研究者は、ゴールを思い浮かべやすいほど近く感じられ、がんばりが増えると説明している。これはお金ではなく、体を使う課題での結果だ。
02研究では何がわかっているのか?
進捗の見え方や、進んだ分と残りの分のどちらに注目するかで、がんばり方が変わる。進捗を記録して確かめること自体にも効果がある。
Cheema & Bagchi(2011)[1]
握力計を130秒握り続ける実験で、時間の経過を棒グラフで見せたグループは、ストップウォッチだけを見せたグループより、ゴールが近づいたときの力の落ち方がゆるやかだった。ゴールを思い浮かべやすいほど近く感じられ、努力が増えることを示した。
対象: 実験参加者(握力計の課題。水泳競技のデータも分析) / 限界: 視覚化の効果はゴールに近いときに見られた。お金ではなく体を使う短時間の課題であり、貯金にそのまま当てはまるとは限らない。
Koo & Fishbach(2012)[2]
目標までの距離によって、注目すべき進捗表示が変わることを示した。目標達成の初期段階では「これだけ達成した」という達成分に注目する方がやる気を高める一方、目標に近づいてからは「あと少し」という残り分に注目する方が効果的だった。
対象: 複数の実験(Journal of Consumer Research掲載) / 限界: 実験室での短期的な目標達成課題が中心で、数か月〜数年単位の貯金目標への一般化には注意が必要。
Harkin ほか(2016)[3]
138件の実験(参加者は合計19,951人)をまとめたメタ分析。進捗を確かめるよう促す働きかけは、目標の達成を高めていた(効果量 d = 0.40)。進捗を紙などに記録したときや、結果を人に報告・公開したときに、効果がより大きかった。
対象: 進捗の確認を促すグループと促さないグループに無作為に分けた138件の研究(Psychological Bulletin掲載) / 限界: 貯金に限った分析ではなく、棒グラフと数字のような見せ方の違いを比べたものでもない。
03今日からできる小さな一歩
貯金額を数字の羅列で見るのをやめ、進捗が一目でわかる形に変える。
目標額と現在額を紙かアプリに書き出す
「目標30万円・現在8万円」のように、目標と現在地をセットで書き出すだけでよい。
所要 3分
進捗を棒グラフか円グラフで描く
紙に手書きの棒グラフでもよいので、達成率が視覚的にわかる形にする。
所要 5分
目標到達が近づいたら「残り」の表示に切り替える
序盤は「ここまで貯まった」、終盤は「あと〇〇円」という見せ方に切り替える。
所要 継続的に意識
04続けるためのコツ
進捗表示を更新する作業自体を、負担ではなく小さな達成感を得る機会にする。
- 毎回細かく更新する必要はない。月に1回など決まった日に進捗バーを塗り足すだけでも、進捗を確かめる機会になる。進捗を紙などに記録したときに効果が大きかったという分析もある[3]。
05よくある質問
貯金額をプログレスバーで見せると本当に効果があるの?
効果を示す実験はありますが、お金で確かめたものではありません。握力計を130秒握り続ける課題で、時間の経過を棒グラフで見せたグループは、ストップウォッチだけを見せたグループより、ゴールが近づいたときに力が落ちにくくなりました。貯金でも同じように働くかは、この実験だけでは言えません。
「達成した分」と「残りの分」、どちらを見せる方が効果的?
目標までの距離によって変わります。研究では、目標達成の初期は「これだけ貯まった」という達成分を見せる方がやる気を高め、目標が近づいてからは「あと少し」という残り分を見せる方が効果的であることが示されています。
出典
- Cheema, A., & Bagchi, R. (2011). The Effect of Goal Visualization on Goal Pursuit: Implications for Consumers and Managers. Journal of Marketing, 75(2), 109-123. https://doi.org/10.1509/jmkg.75.2.109
- Koo, M., & Fishbach, A. (2012). The Small-Area Hypothesis: Effects of Progress Monitoring on Goal Adherence. Journal of Consumer Research, 39(3), 493-509. https://doi.org/10.1086/663827
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198-229. https://doi.org/10.1037/bul0000025


