ネットの衝動買いを減らすには?研究からわかった、今日からできる5つの工夫

夜にスマホを眺めていて、気づいたら買い物が終わっていた。ネットの衝動買いは、意志が弱いから起きるのではありません。研究では、セールなどの販売促進や「残りわずか」の表示、楽しく高ぶった気分が衝動買いと結びつき、手軽な支払いは「買いたい」気持ちを高めていました。だから、きっかけの側を少し変えるだけで減らせる余地があります。
3行でわかる
- 54の研究をまとめたメタ分析では、ネットの衝動買いと結びつきが強かったのは、セールなどの販売促進(相関0.37)と、楽しさや高揚感(0.40〜0.41)だった。
- 支払いが手軽なほど「買いたい」気持ちは高まる。中国の160人の実験では、スマホ決済だと購入意向が現金より高かった(7段階で5.13対4.43)。
- だから工夫は「我慢」より「きっかけを減らす」が中心。通知を切る、支払いに一手間を足す、気分が高ぶった時間は買わない、の3つから始めるとよい。
01 悩みの正体ネットの衝動買いは、意志の弱さが原因?
ネットの衝動買いは、意志の弱さだけでは説明できない。研究では、サイトや広告の刺激と、そのときの気分が衝動買いと結びついていた。
ネット通販は、24時間開いていて、数回のタップで買えます。そこに「本日限り」「残り3点」といった表示が重なります。
衝動買いが起きる心の仕組みは衝動買いはなぜ起きる?で、「残りわずか」に弱い理由は希少性と買い物の研究で詳しく扱いました。この記事では、その先の「では、どうすれば減らせるか」に絞ります。
02 科学的にわかっていることネットで衝動買いを招きやすいきっかけは何?
ネットの衝動買いと特に結びつきが強いのは、セールなどの販売促進、「残りわずか」の表示、楽しく高ぶった気分の3つ。支払いの手軽さも買いたい気持ちを高める。
Zhao ら(2022)[1]
ネットの衝動買いを調べた54の研究をまとめると、衝動買いとの相関は、楽しさ・前向きな気分が0.41、高揚感が0.40、販売促進が0.37、「残りわずか」などの希少性が0.32だった。一方、落ち込んだ気分(ネガティブな感情)との結びつきは統計的にはっきりしなかった。
対象: 2006〜2020年に発表された54研究(複数の国) / 限界: 元の研究の相関をまとめたもので、原因と結果は決められない。研究ごとのばらつきも大きい。
| きっかけ | 衝動買いとの相関(メタ分析) | この記事の工夫 |
|---|---|---|
| 楽しさ・前向きな気分 | 0.41 | 工夫3 |
| 高揚感(気分の高ぶり) | 0.40 | 工夫3 |
| セールなどの販売促進 | 0.37 | 工夫1 |
| 「残りわずか」などの希少性 | 0.32 | 工夫1 |
| サイトの使いやすさ | 0.22 | 工夫2 |
| 落ち込んだ気分 | 0.21(統計的に有意でない) | ― |
相関は−1〜1の値で、プラスで大きいほど一緒に起きやすいことを表します。0.3〜0.4は、心理学では中くらいの強さです。
Ma ら(2024)[2]
同じお菓子や飲み物でも、スマホ決済で払う場面を想像した人は、現金で払う場面を想像した人より「買いたい」気持ちが高かった(7段階で平均5.13対4.43)。値段が高い商品では、スマホ決済のほうが「払う痛み」も小さかった(3.46対4.30)。
対象: 中国のオンライン実験に参加した成人160人。視線計測の追加実験は大学生59人 / 限界: 測ったのは購入の意向で、実際の支出額ではない。比べたのはスマホ決済と現金で、ワンクリック購入そのものは調べていない。
Vihari ら(2022)[3]
いまの瞬間に注意を向ける傾向(マインドフルネス)が高い人ほど、ネットの衝動買いが少なかった(標準化係数 −0.17)。その一部は、ネットを使いすぎる傾向が少ないことを通じたつながりだった。
対象: インドの4都市で働く会社員598人 / 限界: 1回のアンケートによる相関の研究で、マインドフルネスを練習すれば衝動買いが減るとまでは言えない。
03 今日からできる小さな一歩ネットの衝動買いを減らすには、何から始める?
衝動買いを減らす第一歩は、我慢する力を鍛えることより、買うきっかけを減らすこと。通知を切る、支払いに一手間を足す、高ぶった時間は買わない、の順で試すとよい。
セールの通知とメールを止める
よく使う通販アプリのプッシュ通知を切り、セール情報のメールを配信停止にする。販売促進と「残りわずか」は、メタ分析で衝動買いと中くらいの強さで結びついていたきっかけです。見なければ、反応する回数そのものが減ります。
所要 5分(アプリ3つ程度)
支払いに「一手間」を足す
通販サイトに保存したカード情報を消す、ワンクリック購入の設定を切る。支払いが手軽なほど買いたい気持ちが高まるという実験結果を、逆向きに使う工夫です。毎回カード番号を入力する数十秒が、考え直す時間になります。
所要 5分
気分が高ぶった時間は「カートに入れるだけ」にする
衝動買いと結びついていたのは、落ち込んだ気分より、楽しさや高揚感でした。夜ふかし中、イベントの後、給料日など、気分が上がっているときは購入ボタンを押さず、カートに入れて翌日に見直すと決めておきます。
所要 0分(ルールを決めるだけ)
「もし〜したら、〜する」を1行書いておく
例:「もしセールの通知を見たら、カートに入れて翌朝もう一度考える」。あらかじめ状況と行動を結びつける書き方で、迷う場面での判断を前もって決めておけます。
所要 2分
買い物アプリを開く前に、ひと呼吸おく
アプリを開く前に「いま何を買いに来たか」を一言で言ってみる。目的がなく、なんとなく眺めに来たのなら閉じます。マインドフルネスが高い人ほど衝動買いが少なかったという研究を参考にした工夫です。
所要 10秒
04 続けるためのコツ衝動買い対策を続けるコツは?
衝動買い対策は、全部を一度にやらず、効きそうなきっかけを1つ選んで仕組みにすると続く。買ってしまった日があっても、設定を戻さないことが大切。
- 自分のきっかけを1つ特定する。02の表のうち、自分に一番当てはまる行を選び、その行の工夫から始める。
- 我慢ではなく設定で続ける。通知オフやカード情報の削除は、一度やれば毎日の努力がいらない。
- 「全部やめる」を目標にしない。欲しい物を買うのは悪いことではない。減らしたいのは、後で「なぜ買ったのか」と思う買い物だけ。
- 買ってしまった日は記録だけする。何時に、どんな気分で、どの通知から買ったかを1行メモすると、次に切るべききっかけが見える。
- セール時期は先に予定に入れる。大型セールの前日に、本当に必要な物のリストを作っておく。リストにない物はカートに入れるだけにする。
05よくある質問
ネットの衝動買いを防ぐ一番簡単な方法は?
通販アプリの通知とセールのメールを止めることです。54研究のメタ分析では、セールなどの販売促進(相関0.37)と「残りわずか」の表示(0.32)が衝動買いと結びついていました。設定は一度で済み、毎日の我慢がいりません。
落ち込んでいるときのほうが衝動買いしやすいのでは?
ネットの衝動買いについては、そうとは限りません。54研究のメタ分析では、落ち込んだ気分との結びつきは統計的にはっきりせず、楽しさ(0.41)や高揚感(0.40)のほうが強く結びついていました。気分が上がっているときこそ注意が必要です。
カード情報を保存しないだけで、本当に効果があるの?
保存したカード情報を消す効果を直接確かめた研究は見つかっていません。ただ、中国の160人の実験では、手軽なスマホ決済のほうが現金より購入意向が高く(7段階で5.13対4.43)、支払いの手軽さが買いたい気持ちを高めることは示されています。一手間を足すのは、それを逆に使う工夫です。
衝動買いが止められないのは病気?
多くの衝動買いは誰にでも起きることです。ただし、買い物を止められず生活に支障が出ている場合は「買い物症」と呼ばれる状態のこともあります。治療研究のレビューでは集団での認知行動療法の効果が報告されているので、困っているときは専門家に相談してください。
出典
- Zhao, Y., Li, Y., Wang, N., Zhou, R., & Luo, X. (2022). A Meta-Analysis of Online Impulsive Buying and the Moderating Effect of Economic Development Level. Information Systems Frontiers, 24, 1667–1688. https://doi.org/10.1007/s10796-021-10170-4
- Ma, Q., Tan, Y., He, Y., Cheng, L., & Wang, M. (2024). Why does mobile payment promote purchases? Revisiting the pain of paying, and understanding the implicit pleasure via selective attention. PsyCh Journal, 13(5), 760–779. https://doi.org/10.1002/pchj.765
- Vihari, N. S., Sinha, N. K., Tyagi, A., & Mittal, S. (2022). Effect of mindfulness on online impulse buying: Moderated mediation model of problematic internet use and emotional intelligence. Frontiers in Psychology, 13, 1012331. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.1012331
- Müller, A., Laskowski, N. M., Thomas, T. A., et al. (2023). Update on treatment studies for compulsive buying-shopping disorder: A systematic review. Journal of Behavioral Addictions, 12(3), 631–651. https://doi.org/10.1556/2006.2023.00033


